二級建築士 建築法規 問題No.9【防火区画等】徹底解説※完全無料

主な関係法令【防火区画等の規定】
  • 法第26条(防火壁等)
  • 法第27条(耐火建築物等としなければならない特殊建築物)
  • 法別表第1(耐火建築物等としなければならない特殊建築物)
  • 令第112条(防火区画)
  • 令第113条(木造等の建築物の防火壁及び防火床)
  • 令第114条(建築物の界壁、間仕切壁及び隔壁)

防火区画、防火壁等、界壁等の規定から、五肢択一式の問題で毎年必ず1問出題されています。
令和元年は法第27条の耐火建築物に関する問題が出題されました。

令第112条「防火区画」は、条文が長く、問題に関係する部分を探すのに時間を要します。
法令集に線引きして「面積区画」「高層区画」「竪穴区画」「異種用途区画」「防火設備の性能」「管及び風道貫通部」それぞれの規定が何項に記載されているか、整理しましょう。

防火区画

令第112条(防火区画)

防火区画の方法は以下の4種類あります。

  • 面積区画
  • 高層区画
  • 竪穴区画
  • 異種用途区画

防火区画の種類ごとに、対象建築物、区画面積等、区画の構造等が定められています。

面積区画

面積区画は、耐火性能によって3つに分けられます。

面積区画①(令112条1項)

対象建築物の耐火性能
主要構造部を耐火構造とした建築物、準耐火建築物など

区画面積等
床面積≦1,500㎡

区画の構造
1時間準耐火構造
特定防火設備

緩和・除外規定
劇場等の客席、体育館、工場等で用途上やむを得ないものは除外
階段室、昇降機の昇降路(乗降ロビー含む)で1時間準耐の床・壁又は特定防火設備で区画した部分は除外

面積区画②(令112条4項)

対象建築物の耐火性能
準耐火建築物など

区画面積等
床面積≦500㎡

区画の構造
1時間準耐火構造
特定防火設備
防火上主要な間仕切壁:準耐火構造

緩和・除外規定
体育館・工場等で天井(ない場合には屋根)、壁の内装を準不燃材料とした部分は除外
階段室、昇降機の昇降路(乗降ロビー含む)で1時間準耐の床・壁又は特定防火設備で区画した部分は除外

面積区画③(令112条5項)

対象建築物の耐火性能
1時間準耐火建築物など

区画面積等
床面積≦1,000㎡

区画の構造
1時間準耐火構造
特定防火設備

緩和・除外規定
体育館・工場等で天井(ない場合には屋根)、壁の内装を準不燃材料とした部分は除外
階段室、昇降機の昇降路(乗降ロビー含む)で1時間準耐の床・壁又は特定防火設備で区画した部分は除外

チェックポイント

面積区画の対象は、建築物の耐火性能と延べ面積の規模で決まります。

  • 耐火構造の建築物で延べ面積1,500㎡を超えるもの
  • 1時間準耐火建築物で延べ面積1,000㎡を超えるもの
  • 準耐火建築物で延べ面積500㎡を超えるもの

高層区画

高層区画は、内装仕上及び下地の不燃性能によって3つに分けられます。

高層区画①(令112条7項)

対象建築物
一般の建築物(11階以上の部分)

区画面積等
床面積≦100㎡

区画の構造
耐火構造
防火設備

緩和・除外規定
階段室・昇降機の昇降路(乗降ロビーを含む)、廊下、その他避難のための部分、共同住宅の住戸(床面積の合計≦200㎡)で、耐火構造の床、壁、特定防火設備(一般の建築物は防火設備)で区画した部分は除外

高層区画②(令112条8項)

対象建築物
内装仕上、下地とも準不燃材料の建築物(11階以上の部分)

区画面積等
床面積≦200㎡

区画の構造
耐火構造
特定防火設備

緩和・除外規定
階段室・昇降機の昇降路(乗降ロビーを含む)、廊下、その他避難のための部分、共同住宅の住戸(床面積の合計≦200㎡)で、耐火構造の床、壁、特定防火設備(一般の建築物は防火設備)で区画した部分は除外

高層区画③(令112条9項)

対象建築物
内装仕上、下地とも不燃材料の建築物(11階以上の部分)

区画面積等
床面積≦500㎡

区画の構造
耐火構造
特定防火設備

緩和・除外規定
階段室・昇降機の昇降路(乗降ロビーを含む)、廊下、その他避難のための部分、共同住宅の住戸(床面積の合計≦200㎡)で、耐火構造の床、壁、特定防火設備(一般の建築物は防火設備)で区画した部分は除外

チェックポイント

高層区画の対象は、11階以上の建築物です。防火区画の問題で、11階以上の階数の建築物が記載されていれば、まず高層区画の条文をチェックしましょう。

内装仕上げと下地材料が「不燃」「準不燃」「どちらでもない」で区画面積が異なります。

竪穴区画

竪穴区画は、耐火性能や用途、規模によって3つに分けられます。

竪穴区画①(令112条11項)

対象建築物
主要構造部が準耐火構造で、地階又は3階以上に居室のある建築物

区画面積等
メゾネット住戸、吹抜け、階段、EV、昇降路その他竪穴を形成する部分の周囲を区画

区画の構造
準耐火構造
防火設備

緩和・除外規定等
避難階の直上階又は直下階のみに通じる吹抜部分、階段部分等で内装(下地を含む)を不燃材料でつくったもの
階数≦3で延べ面積≦200㎡の一戸建て住宅、長屋、共同住宅の住戸(床面積合計≦200㎡)の吹抜け、階段部分、昇降機の昇降路部分等は除外

竪穴区画②(令112条12項)

対象建築物
3階を病院、診療所(病室があるものに限る)、児童福祉施設等(寝室があるものに限る)のうち、階数が3で延面積200㎡未満のもの

区画面積等
竪穴部分とその他の部分との区画

区画の構造
間仕切壁
防火設備

緩和・除外規定等
火災が発生した場合に避難上支障のある高さまで煙等が降下しない建築物として、仕上げ材料、消火設備、排煙設備を考慮して大臣が定めたものの竪穴部分については、適用しない

竪穴区画③(令112条13項)

対象建築物
3階をホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎の建築物のうち、階数が3で延面積200㎡未満のもの

区画面積等
竪穴部分とその他の部分との区画

区画の構造
間仕切壁
戸(ふすま、障子等は除く)

緩和・除外規定等
竪穴部分同士が接する場合で、竪穴部分が用途上区画することが困難であり、かつ、壁、天井の下地、仕上げが準不燃材料であれば、すべての竪穴区画の適用は、一の竪穴区画とみなされる

チェックポイント

防火区画の問題で、「階段」や「EV」など記載されていれば、竪穴区画の条文をチェックしましょう。

3階建ての建築物が対象です。

ただし、緩和規定があるから、対象内外はしっかり整理しよう!

異種用途区画(令112条18項)

対象建築物
一部が法27条の特殊建築物に該当する建築物

区画面積等
該当用途部分相互間及びその他の部分との間を区画

区画の構造
1時間準耐火構造
特定防火設備

チェックポイント

対象は、耐火建築物等としなければならない特殊建築物の部分とその他の部分です。

法27条を確認し、用途と規模を整理しましょう。

防火区画に関するその他の規定

防火区画に接する外壁

令第112条(防火区画)第16、17項

 防火区画に接する外壁は、以下の構造としなければなりません。

  • 外壁のうちこれらに接する部分を含み幅90㎝以上の部分を準耐火構造
  • 外壁面から50㎝以上突出した準耐火構造のひさし、床、袖壁などで防火上有効に遮る
  • 開口部は、防火設備とする

設備が防火区画を貫通する場合

令第112条(防火区画)第20、21項

設備が防火区画を貫通する場合は、貫通する設備の種類に応じ、以下の構造としなければなりません。

  • 給水管、配電管が防火区画を貫通する場合、準耐火構造の防火区画との隙間をモルタルその他の不燃材料で埋める
  • 換気、暖房又は冷房の設備の風道が防火区画を貫通する場合、特定防火設備とする(自動的閉鎖、遮煙性能を有するもの)

防火区画から出題された過去問題

【令和5年問題】
天井のうち、その下方からの通常の火災時の加熱に対してその上方への延焼を有効に防止することができるものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものを、「強化天井」という。

設問は、正しい

令第112条第4項第一号より、強化天井とは、天井のうち、その下方からの通常の火災時の加熱に対してその上方への延焼を有効に防止することができるものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。

【令和5年問題】
主要構造部を準耐火構造とした4階建ての共同住宅で、メゾネット形式の住戸(住戸の階数が2で、かつ、床面積の合計が 130 ㎡であるもの)においては、住戸内の階段の部分と当該部分以外の部分とを防火区画しなくてもよい。

設問は、正しい

令第112条第11項第二号より、階数が3以下で延べ面積が200㎡以内の一戸建ての住宅又は長屋若しくは共同住宅の住戸のうちその階数が3以下で、かつ、床面積の合計が200㎡以内であるものにおける吹抜きとなつている部分、階段の部分、昇降機の昇降路の部分その他これらに類する部分は防火区画しなくてもよい

【令和5年問題】
建築基準法施行令第 136 条の2第二号ロに掲げる基準に適合する地上3階建ての事務所であって、3階に居室を有するものの竪穴部分については、直接外気に開放されている廊下と準耐火構造の床若しくは壁又は建築基準法第2条第九号の二ロに規定する防火設備で区画しなければならない。

設問は、誤っている

令第112条第11項のカッコ書きより、直接外気に開放されている廊下、バルコニーその他これらに類する部分との区画は除かれます

【令和4年問題】
主要構造部を準耐火構造とした 3 階建て、延べ面積 150㎡の一戸建て住宅( 3 階部分に居室を有するもの)においては、階段の部分とその他の部分とを防火区画しなくてよい。

設問は、正しい

令第112条第11項のただし書きより、階数が3以下で延べ面積が200㎡以内の一戸建ての住宅又は長屋若しくは共同住宅の住戸のうちその階数が3以下で、かつ、床面積の合計が200㎡以内であるものにおける吹抜きとなつている部分、階段の部分、昇降機の昇降路の部分その他これらに類する部分は、防火区画しなくてよい。

【令和4年問題】
給水管が準耐火構造の防火区画を貫通する場合においては、当該管と準耐火構造の防火区画との隙間をモルタルその他の不燃材料で埋めなければならない。

設問は、正しい

令第112条第20項より、給水管が防火区画を貫通する場合においては、当該管と準耐火構造の防火区画との隙間をモルタルその他の不燃材料で埋めなければならない。

【令和4年問題】
配電管が防火壁を貫通する場合においては、当該管と防火壁との隙間をモルタルその他の不燃材料で埋めなければならない。

設問は、正しい

令第113条第2項による令第112条第20項の準用により、配電管が防火壁を貫通する場合においては、当該管と防火壁との隙間をモルタルその他の不燃材料で埋めなければならない。

【令和4年問題】
防火区画(建築基準法施行令第 112 条第 18 項に規定するものを除く。)を構成する床に接する外壁については、その接する部分を含み幅 90㎝以上の部分を準耐火構造とするか、外壁面から 50㎝以上突出した準耐火構造のひさし等で防火上有効に遮らなければならない。

設問は、正しい

令第112条第16項より、防火区画(建築基準法施行令第 112 条第 18 項に規定するものを除く。)を構成する床に接する外壁については、その接する部分を含み幅 90㎝以上の部分を準耐火構造とするか、外壁面から50㎝以上突出した準耐火構造のひさし等で防火上有効に遮らなければならない。

【令和3年問題】

3 階を診療所(患者の収容施設があるもの)とした 3 階建て、延べ面積 150㎡の建築物(建築基準法施行令第 112 条第 11 項に規定する建築物及び火災が発生した場合に避難上支障のある高さまで煙又はガスの降下が生じない建築物ではないものとする。)においては、竪穴部分とその他の部分とを間仕切壁又は所定の防火設備で区画しなければならない。

設問は、正しい

令第112条第12項より、3階を病院、診療所(患者の収容施設があるものに限る。)又は児童福祉施設等(入所する者の寝室があるものに限る。)の用途に供する建築物のうち階数が3で延べ面積が200㎡未満のもののたて穴部分については、当該たて穴部分以外の部分と間仕切壁又は法第2条第九号の二ロに規定する防火設備で区画しなければならない。

【令和3年問題】

防火区画(建築基準法施行令第 112 条第 18 項に規定するものを除く。)を構成する床に接する外壁については、その接する部分を含み幅 90㎝以上の部分を準耐火構造とするか、外壁面から50㎝以上突出した準耐火構造のひさし等で防火上有効に遮らなければならない。

設問は、正しい

令第112条第16項より、防火区画(建築基準法施行令第 112 条第 18 項に規定するものを除く。)を構成する床に接する外壁については、その接する部分を含み幅 90㎝以上の部分を準耐火構造とするか、外壁面から50㎝以上突出した準耐火構造のひさし等で防火上有効に遮らなければならない。

【令和3年問題】

建築物の竪穴部分とその他の部分とを区画する防火設備は、避難上及び防火上支障のない遮煙性能を有するものでなくてもよい。

設問は、誤っている

令第112条第19項第二号ロより、建築物の竪穴部分とその他の部分とを区画する防火設備は、避難上及び防火上支障のない遮煙性能を有し、かつ、常時閉鎖又は作動をした状態にあるもの以外のものにあつては、火災により煙が発生した場合に自動的に閉鎖又は作動をするものでなければならない。

【令和2年問題】

主要構造部を準耐火構造とした 4 階建ての共同住宅で、メゾネット形式の住戸(住戸の階数が2 で、かつ、床面積の合計が 130㎡であるもの)においては、住戸内の階段の部分とその他の部分とを防火区画しなくてもよい。

設問は、正しい

令第112条第11項第二号より、階数が3以下で延べ面積が200㎡以内の一戸建ての住宅又は長屋若しくは共同住宅の住戸のうちその階数が3以下で、かつ、床面積の合計が200㎡以内であるものにおける吹抜きとなつている部分、階段の部分、昇降機の昇降路の部分その他これらに類する部分は防火区画しなくてもよい

【令和2年問題】

2 階建ての建築物(各階の床面積が 300㎡)で、 1 階が幼保連携型認定こども園、 2 階が事務所であるものは、幼保連携型認定こども園の部分とその他の部分とを防火区画しなければならない。

設問は、誤っている

令第112条第18項より、建築物の一部が法第27条第1項各号、第2項各号又は第3項各号のいずれかに該当する場合においては、その部分とその他の部分とを防火区画しなければならない。1 階が幼保連携型認定こども園で床面積が 300㎡及び事務所は、これに該当しないため、防火区画はしなくてもよい。

【令和2年問題】

配電管が準耐火構造の防火区画の壁を貫通する場合においては、当該管と準耐火構造の防火区画との隙間をモルタルその他の不燃材料で埋めなければならない。

設問は、正しい

令第112条第20項より、配電管が準耐火構造の防火区画の壁を貫通する場合においては、当該管と準耐火構造の防火区画との隙間をモルタルその他の不燃材料で埋めなければならない。

【平成30年問題】

4階建ての耐火建築物の共同住宅で、メゾネット形式の住戸(住戸の階数が2で、かつ、床面積の合計が130㎡であるもの)においては、住戸内の階段の部分とその他の部分とを防火区画しなければならない。

設問は、誤っている

令第112条11項二号より、階数が3以下で延べ面積が200㎡以内の一戸建ての住宅又は長屋若しくは共同住宅の住戸のうちその階数が3以下で、かつ、床面積の合計が200㎡以内であるものにおける吹抜きとなつている部分、階段の部分、昇降機の昇降路の部分その他これらに類する部分は、適用除外となるため、防火区画する必要はない。

【平成29年問題】

主要構造部を準耐火構造とした3階建て、延べ面積 150㎡の一戸建て住宅においては、階段の部分とその他の部分とを防火区画しなくてよい。

設問は、正しい

令第112条第11項のただし書きより、階数が3以下で延べ面積が200㎡以内の一戸建ての住宅又は長屋若しくは共同住宅の住戸のうちその階数が3以下で、かつ、床面積の合計が200㎡以内であるものにおける吹抜きとなつている部分、階段の部分、昇降機の昇降路の部分その他これらに類する部分は、防火区画しなくてよい。

【平成29年問題】

2階建て、延べ面積 300㎡の事務所の1階の一部が自動車車庫(当該用途に供する部分の床面積の合計が 60㎡)である場合、自動車車庫の部分とその他の部分とを防火区画しなくてよい。

設問は、正しい

令第112条第18項より、建築物の一部が法第27条第1項各号、第2項各号又は第3項各号のいずれかに該当する場合においては、防火区画しなければならない。1階にある床面積60㎡の自動車車庫は、該当しないため、防火区画しなくてよい。

【平成29年問題】

建築基準法施行令第109条に規定する防火設備であって、これに通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後1時間当該加熱面以外の面に火炎を出さないものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものを、「特定防火設備」という。

設問は、正しい

令第112条第1項より、特定防火設備とは、建築基準法施行令第109条に規定する防火設備であって、これに通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後1時間当該加熱面以外の面に火炎を出さないものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。

【平成29年問題】

天井のうち、その下方からの通常の火災時の加熱に対してその上方への延焼を有効に防止することができるものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものを、「強化天井」という。

設問は、正しい

令第112条第4項第一号より、強化天井とは、天井のうち、その下方からの通常の火災時の加熱に対してその上方への延焼を有効に防止することができるものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。

界壁・間仕切壁・隔壁

令第114条(建築物の界壁、間仕切壁及び隔壁)

建築物の用途によって、「界壁」、「防火上主要な間仕切壁」、「隔壁」の設置を行うよう防火上の措置が定められています。

界壁

令114条1項

長屋、共同住宅は住戸同士が隣接しているため、火災が住戸間での燃え広がりやすい。これを防ぐため、住戸間に設置する壁を界壁といいます。

界壁

対象建築物の用途等
長屋・共同住宅

構造
準耐火構造

防火措置
小屋裏又は天井裏まで達せしめる

除外規定等
自動スプリンクラー設備設置部分等は除く

防火上主要な間仕切壁

令114条2項

火災が発生した際に、大きな混乱が生じる恐れがある施設(学校や病院、児童福祉施設のように避難弱者が利用する施設等)は、火災の燃え広がりを防ぎ避難時間を確保するため、居室同士や居室と避難経路を区画する壁を、防火上主要な間仕切壁とします。

防火上主要な間仕切壁

対象建築物の用途等
学校、病院、診療所(患者の収容施設のないもの除く)、児童福祉施設等、ホテル、旅館、下宿、寄宿舎、マーケット

構造
準耐火構造

防火措置
小屋裏又は天井裏まで達せしめる

除外規定等

  • 令112条4項に規定に該当する場合は除く
  • 大臣が定めた部分の間仕切壁は除く

隔壁(小屋裏)

令114条3項

建築面積が300㎡を超える木造の小屋組は、小屋裏部分での燃え広がりを防止するため、小屋組の桁行間隔12m以内ごとに隔壁を設けなければなりません。

隔壁(小屋裏)

対象建築物の用途等
建築面積>300㎡の建築物(小屋組木造)

構造
準耐火構造

防火措置
小屋組の桁行間隔12m以内ごとに設ける

除外規定等

  • 主要構造部が耐火構造又は耐火性能に関する技術的基準に適合するものは除く
  • 各室、通路について、壁と天井の仕上げを難燃材料でし、又はスプリンクラー設備等で自動式のもの及び排煙設備を設けたものは除く
  • 畜舎等で避難上、延焼上支障がないものは除く

隔壁(渡り廊下小屋裏)

令114条4項

各建築物の延べ面積が200㎡を超える場合、この建築物同士を繋ぐ渡り廊下の桁行方向4mを超えるものは、渡り廊下の小屋裏に隔壁を設けなければなりません。

隔壁(渡り廊下小屋裏)

対象建築物の用途等
延べ面積>各200㎡の建築物(耐火建築物除く)の間の渡り廊下(小屋組木造)

構造
準耐火構造

防火措置
桁行>4mの場合に設ける

設備が防火区画を貫通する場合の準用

令114条5項

設備が、「界壁」、「防火上主要な間仕切壁」、「隔壁」を貫通する場合、防火区画と同様に貫通する設備の種類に応じ、以下の構造としなければなりません。

  • 給水管、配電管が貫通する場合、隙間をモルタルその他の不燃材料で埋める
  • 換気、暖房又は冷房の設備の風道が貫通する場合、防火設備とする
チェックポイント

換気、暖房又は冷房の設備の風道が区画貫通する場合の違いは、

  • 「防火区画」を貫通する場合は、特定防火設備(自動的閉鎖、遮煙性能を有するもの)
  • 「界壁、防火上主要な間仕切壁、隔壁」を貫通する場合は、防火設備

建築物の界壁、間仕切壁及び隔壁から出題された過去問題

【令和5年問題】
延べ面積がそれぞれ 200 ㎡を超える建築物で耐火建築物以外のもの相互を連絡する渡り廊下で、その小屋組が木造であり、かつ、桁行が4mを超えるものは、小屋裏に準耐火構造の隔壁を設けなければならない。

設問は、正しい

令第114条第4項より、延べ面積がそれぞれ200㎡を超える建築物で耐火建築物以外のもの相互を連絡する渡り廊下で、その小屋組が木造であり、かつ、けた行が4mを超えるものは、小屋裏に準耐火構造の隔壁を設けなければならない。

【令和4年問題】
病院の用途に供する建築物の当該用途に供する部分の防火上主要な間仕切壁は、天井の全部が強化天井であっても、小屋裏又は天井裏に達せしめなければならない。

設問は、誤っている。

令第114条(建築物の界壁、間仕切壁及び隔壁)第2項より、病院の用途に供する建築物の当該用途に供する部分の防火上主要な間仕切壁は、第112条第4項各号のいずれかに該当する部分を除き、小屋裏又は天井裏に達せしめなければならない。
令第112条(防火区画)第4項より、天井の全部が強化天井である場合は、除かれている。

【令和3年問題】

共同住宅の各戸の界壁(自動スプリンクラー設備等設置部分その他防火上支障がないものとして国土交通大臣が定める部分の界壁ではないものとする。)は、準耐火構造とし、天井が強化天井である場合を除き、小屋裏又は天井裏に達せしめなければならない。

設問は、正しい

令第114条第1項より、長屋又は共同住宅の各戸の界壁(自動スプリンクラー設備等設置部分その他防火上支障がないものとして国土交通大臣が定める部分の界壁を除く。)は、準耐火構造とし、第112条第4項各号のいずれかに該当する部分を除き、小屋裏又は天井裏に達せしめなければならない。

【平成30年問題】

建築面積が300㎡の建築物の小屋組が木造である場合においては、原則として、小屋裏の直下の天井の全部を強化天井とするか、又は桁行間隔12m以内ごとに小屋裏に準耐火構造の隔壁を設けなければならない。

設問は、誤っている

令第114条第3項より、建築面積が300㎡を超える建築物の小屋組が木造である場合においては、小屋裏の直下の天井の全部を強化天井とするか、又は桁行間隔12m以内ごとに小屋裏に準耐火構造の隔壁を設けなければならない。設問は、300㎡を超えていないため誤っている。

【平成29年問題】

延べ面積がそれぞれ 200㎡を超える建築物で耐火建築物以外のもの相互を連絡する渡り廊下で、その小屋組が木造であり、かつ、桁行が4mを超えるものは、小屋裏に準耐火構造の隔壁を設けなければならない。

設問は、正しい

令第114条第4項より、延べ面積がそれぞれ200㎡を超える建築物で耐火建築物以外のもの相互を連絡する渡り廊下で、その小屋組が木造であり、かつ、けた行が4mを超えるものは、小屋裏に準耐火構造の隔壁を設けなければならない。

防火壁等

法第26条(防火壁等)

延べ面積が1,000㎡を超える建築物は、1,000㎡以内ごとに防火壁又は防火床によつて区画しなければなりません。
ただし、次のいずれかに該当する建築物については、防火壁等を設けなくてよい

防火壁等を設けなくてよいもの
  • 耐火建築物又は準耐火建築物
  • 卸売市場の上家、機械製作工場など火災の発生のおそれが少なく、主要構造部が不燃材料その他これに類する構造のもの
  • 防火上必要な政令で定める技術的基準に適合するもの
  • 畜舎などの用途で、周囲状況により避難上及び延焼防止上支障がないものとして大臣基準に適合するも
チェックポイント

「防火壁等」と「防火区画」は一緒ではありません。

耐火建築物や準耐火建築物は、1,000㎡を超えても防火壁や防火床による区画は不要ですが、令112条の防火区画の対象になる可能性はあります。

防火壁、防火床の構造

令第113条(木造等の建築物の防火壁及び防火床)

防火壁、防火床の構造は、次のとおりとする。

  • 耐火構造
  • 倒壊によつて生ずる応力が伝えられた場合に倒壊しないものとして大臣が定めた構造方法
  • 延焼を有効に防止できるものとして大臣が定めた構造方法
  • 開口部の幅及び高さは、2.5m以下とし、かつ、常時閉鎖式、熱感知器等の特定防火設備を設ける
  • 給水管、配電管、換気、暖房又は冷房の設備の風道が貫通する場合は、令112条20、21項を準用

防火壁等から出題された過去問題

【令和5年問題】
配電管が防火床を貫通する場合においては、当該管と防火床との隙間をモルタルその他の不燃材料で埋めなければならない。

設問は、正しい

令第113条第2項より、令第112条第20項の規定は給水管、配電管その他の管が防火壁又は防火床を貫通する場合について準用する。
令第112条20項より、給水管、配電管その他の管が貫通する場合においては、隙間をモルタルその他の不燃材料で埋めなければならない

【令和3年問題】

木造平家建て、延べ面積 1,500㎡の公衆浴場で、準耐火建築物としたものは、防火壁によって区画しなくてもよい。

設問は、正しい

法第26条第ただし書きより、延べ面積が1,000㎡を超える建築物であっても、準耐火建築物としたものは、防火壁によって区画しなくてもよい。

【令和2年問題】

2 階建て、延べ面積が 1,100㎡の展示場で、耐火建築物及び準耐火建築物以外のものは、床面積の合計 1,000㎡以内ごとに防火上有効な構造の防火壁又は防火床によって有効に区画しなければならない。

設問は、正しい

法第26条より、延べ面積が1,000㎡を超える建築物は、防火上有効な構造の防火壁又は防火床によつて有効に区画し、かつ、各区画の床面積の合計をそれぞれ1,000㎡以内としなければならない。

【令和2年問題】

防火壁に設ける開口部の幅及び高さは、それぞれ 2.5 m以下とし、かつ、これに特定防火設備で所定の構造であるものを設けなければならない。

設問は、正しい

令第113条第1項第四号より、防火壁に設ける開口部の幅及び高さ又は防火床に設ける開口部の幅及び長さは、それぞれ2.5m以下とし、かつ、これに特定防火設備で所定の構造であるものを設けなければならない。

【平成30年問題】

木造の建築物に防火壁を設けなければならない場合においては、当該防火壁は耐火構造とし、かつ、自立する構造であれば、組積造とすることができる。

設問は、誤っている

令第113条第1項二号より、通常の火災による当該防火壁又は防火床以外の建築物の部分の倒壊によつて生ずる応力が伝えられた場合に倒壊しないものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものとすること。無筋コンクリート造又は組積造とはしてはならない。

【平成30年問題】

平家建て、延べ面積が1,200㎡の旅館で、耐火建築物及び準耐火建築物以外のものは、床面積の合計1,000㎡以内ごとに防火上有効な構造の防火壁によって有効に区画しなければならない。

設問は、正しい

法第26条により、延べ面積が1,000㎡を超える建築物は、防火上有効な構造の防火壁又は防火床によつて有効に区画し、かつ、各区画の床面積の合計をそれぞれ1,000㎡以内としなければならない。

【平成30年問題】

給水管が防火壁を貫通する場合においては、当該管と防火壁との隙間を準不燃材料で埋めなければならない。

設問は、誤っている

令第113条第2項より、令第112条第20項の規定は給水管、配電管その他の管が防火壁又は防火床を貫通する場合について準用する。
令第112条20項より、給水管、配電管その他の管が貫通する場合においては、隙間をモルタルその他の不燃材料で埋めなければならない。設問は、準不燃材料であるため誤っている。

耐火建築物等としなければならない建築物

  • 法第27条(耐火建築物等としなければならない特殊建築物)
  • 法別表第1(耐火建築物等としなければならない特殊建築物)

耐火建築物または準耐火建築物としなければならない建築物は、以下の表のとおりです。

用途耐火建築物とする耐火又は準耐火建築物とする
用途のある階用途の床面積の合計用途の床面積の合計
劇場、映画館、演劇場主階が1階にないもの200㎡以上(客席の部分)
(屋外観覧席1,000㎡以上)
3階以上の階
観覧場、公会堂、集会場3階以上の階
病院、診療所(有床)、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎、児童福祉施設等3階以上の階300㎡以上(2階の部分(病院、診療所は2階に病室があるもの))
学校、体育館、博物館、美術館、図書館、ボーリング場、スキー場、水泳場、スポーツ練習場3階以上の階2,000㎡以上
百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、待合、料理店、飲食店、物販店3階以上の階3,000㎡以上500㎡以上(2階の部分)
倉庫200㎡以上(3階以上の部分)1,500㎡以上
自動車車庫、自動車修理工場、映画スタジオ、テレビスタジオ3階以上の階150㎡以上
危険物の貯蔵場又は処理場(令116条表)全て
チェックポイント

法27条と別表1は、「耐火建築物」「準耐火建築物」を色分けして整理することをオススメします。

耐火建築物等としなければならない建築物から出題された過去問題

【令和元年問題】
次の建築物(各階を当該用途に供するものとする。)のうち、建築基準法第 27 条の規定による耐火建築物等としなければならないものはどれか。ただし、防火地域及び準防火地域外にあるものとする。

2 階建ての飲食店で、各階の床面積の合計がそれぞれ 250㎡のもの

設問は、耐火建築物等としなくてもよい

法第27条第1項第一号より、飲食店の用途に供するもので、階数が3で延べ面積が200㎡以上のものは、耐火建築物等としなければならない。同条同項二号及び法別表第1(4)項より、2階の部分の床面積の合計が500㎡以上のものは、耐火建築物等としなければならない。
2 階建ての飲食店で、各階の床面積の合計がそれぞれ 250㎡のものは、これらにあたらないため、建築基準法第 27 条の規定による耐火建築物等としなくてもよい。

【令和元年問題】
次の建築物(各階を当該用途に供するものとする。)のうち、建築基準法第 27 条の規定による耐火建築物等としなければならないものはどれか。ただし、防火地域及び準防火地域外にあるものとする。

2 階建ての児童福祉施設で、各階の床面積の合計がそれぞれ 150㎡のもの

設問は、耐火建築物等としなくてもよい

法第27条第1項第一号より、児童福祉施設の用途に供するもので、階数が3で延べ面積が200㎡以上のものは、耐火建築物等としなければならない。同条同項二号及び法別表第1(2)項より、2階の部分の床面積の合計が300㎡以上のものは、耐火建築物等としなければならない。
2 階建ての児童福祉施設で、各階の床面積の合計がそれぞれ 150㎡のものは、これらにあたらないため、建築基準法第 27 条の規定による耐火建築物等としなくてもよい。

【令和元年問題】
次の建築物(各階を当該用途に供するものとする。)のうち、建築基準法第 27 条の規定による耐火建築物等としなければならないものはどれか。ただし、防火地域及び準防火地域外にあるものとする。

2 階建ての倉庫で、各階の床面積の合計がそれぞれ 100㎡のもの

設問は、耐火建築物等としなくてもよい

法第27条第2項第一号より、倉庫の用途に供するもので、その用途に供する3階以上の部分の床面積の合計が200㎡以上のものは、耐火建築物等としなければならない。
2 階建ての倉庫で、各階の床面積の合計がそれぞれ 100㎡のものは、これらにあたらないため、建築基準法第 27 条の規定による耐火建築物等としなくてもよい。

【令和元年問題】
次の建築物(各階を当該用途に供するものとする。)のうち、建築基準法第 27 条の規定による耐火建築物等としなければならないものはどれか。ただし、防火地域及び準防火地域外にあるものとする。

平家建ての患者の収容施設がある診療所で、床面積の合計が 300㎡のもの

設問は、耐火建築物等としなくてもよい

法第27条第1項第一号より、患者の収容施設がある診療所の用途に供するもので、階数が3で延べ面積が200㎡以上のものは、耐火建築物等としなければならない。同条同項二号及び法別表第1(2)項より、2階の部分の床面積の合計が300㎡以上のものは、耐火建築物等としなければならない。
平家建ての患者の収容施設がある診療所で、床面積の合計が 300㎡のものは、これらにあたらないため、建築基準法第 27 条の規定による耐火建築物等としなくてもよい。

【令和元年問題】
次の建築物(各階を当該用途に供するものとする。)のうち、建築基準法第 27 条の規定による耐火建築物等としなければならないものはどれか。ただし、防火地域及び準防火地域外にあるものとする。

平家建ての自動車車庫で、床面積の合計が 200㎡のもの

設問は、耐火建築物等としなければならない

法第27条第3項第一号及び法別表第1(2)項より、自動車車庫の用途に供するもので、その用途に供する部分の床面積の合計が150㎡以上のものは、耐火建築物等としなければならない。

問題No.9【防火区画等】のまとめ

出題の範囲は、以下のとおりです。

  • 防火区画について(令第112条)
  • 界壁・間仕切壁・隔壁について(令第114条)
  • 防火壁等について(法第26条、令第113条)
  • 耐火建築物等としなければならない建築物について(法第27条、法別表第1)
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