令第46条(構造耐力上必要な軸組等)
建築法規の問題で6問目に出題されるのが、「構造耐力上必要な軸組等について図形・図面形式」です。
令第46条第4項の表1~表3の数値により、必要な軸組長さや、存在する構造耐力上有効な軸組の長さを算定する問題です。
出題パターンは限られていて、数値の入れ間違いや、計算間違いをしなければ正答できる問題です。
構造耐力上有効な軸組
令第46条
構造耐力上必要な軸組
構造耐力上主要な部分である壁、柱及び横架材を木造とした建築物にあつては、壁を設け又は筋かいを入れた軸組を釣合い良く配置しなければならない。
床組み等
床組及び小屋ばり組には木板などを打ち付け、小屋組には振れ止めを設けなければならない。
ただし、国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算した場合においては、この限りでない。
軸組の必要長さの算定
一定規模以上の木造建築物は、張間方向と桁行方向のそれぞれにつき、地震力と風圧力に対して安全である軸組長さとする必要があります。
対象建築物
- 2階建て以上
- 延べ面積50㎡以上
軸組長さの検討
- 地震力に対する軸組長さ
軸組長さ×倍率(表1)≧床面積×(表2)の数値
- 風圧力に対する軸組長さ
軸組長さ×倍率(表1)≧見付面積×(表3)の数値
構造耐力上必要な軸組等を算定するための表
表1 筋交いの倍率
種類 | 工法 | 倍率 |
---|---|---|
壁によるもの | 土塗壁 | 0.5 |
木ずりを片面に打ち付けた壁 | 0.5 | |
木ずりを両面に打ち付けた壁 | 1.0 | |
筋交いによるもの | 厚さ1.5㎝以上×幅9㎝以上の木材 | 1.0(たすき掛け2.0) |
径9㎜以上の鉄筋 | 1.0(たすき掛け2.0) | |
厚さ3㎝以上×幅9㎝以上の木材 | 1.5(たすき掛け3.0) | |
厚さ4.5㎝以上×幅9㎝以上の木材 | 2(たすき掛け4.0) | |
9㎝角以上の木材 | 3(たすき掛け5.0) | |
大臣の定め | 国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの 国土交通大臣の認定を受けたもの | 0.5から5までの範囲内で大臣が定める数値 |
併用 | 壁と筋かいとを併用 | それぞれの数値との和 |
表2 地震力に対する必要壁量を求めるための階の床面積に乗ずる数値
階の床面積に乗ずる数値(単位 ㎝/㎡) | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
地上階数 | 平家建 | 2階建 | 3階建 | |||
屋根などの構造 | 1階 | 2階 | 1階 | 2階 | 3階 | |
土蔵造又は瓦葺などの重い屋根 | 15 | 33 | 21 | 50 | 39 | 24 |
金属板・スレート葺きなどの軽い屋根 | 11 | 29 | 15 | 46 | 34 | 18 |
表3 風圧力に対する必要壁量を求めるための見付面積に乗ずる数値
区域 | 軸組の長さ |
---|---|
一般の区域 | 50 |
特定行政庁が指定する区域 | 50を超え、75以下の範囲内において特定行政庁が定める数値 |
過去の出題パターン
過去に出題された問題は、以下の2パターンです。
必要軸組長さの算定から出題された過去問題
【令和3年問題】
図のような立面を有する瓦葺屋根の木造 2 階建て、延べ面積 140 ㎡の建築物に設ける構造耐力上必要な軸組を、厚さ 3 ㎝×幅 9 ㎝の木材の筋かいを入れた軸組とする場合、 1 階の張り間方向の当該軸組の長さの合計の最小限必要な数値として、建築基準法上、正しいものは、次のうちどれか。ただし、小屋裏等に物置等は設けず、区域の地盤及び風の状況に応じた「地震力」及び「風圧力」に対する軸組の割増はないものとし、国土交通大臣が定める基準に従った構造計算は行わないものとする。
必要軸組長さは、1,700㎝である。
令第46条表2より、瓦葺屋根の階数が2の建築物の1階の階の床面積に乗ずる数値は、33㎝/㎡。
床面積は7m×10m=70㎡。
地震力に対する必要壁量は33㎝/㎡×70㎡=2,310㎝
令第46条表3より、見付面積に乗ずる数値、50㎝/㎡。
見付面積は((1.1m+2.6m+2.75m)-1.35m)×10m=51㎡。
風圧力に対する必要壁量は50㎝/㎡×51㎡=2,550㎝
地震力に対する必要壁量2,310㎝<風圧力に対する必要壁量2,550㎝より、必要壁量は2,550㎝。
令第46条表1より、厚さ 3 ㎝×幅 9 ㎝の木材の筋かいを入れた軸組の倍率は、1.5である。
よって、必要軸組長さは、2,550㎝÷1.5=1,700㎝
【平成30年問題】
図のような立面を有する瓦葺屋根の木造2階建て、延べ面積140㎡の建築物に設ける構造耐力上必要な軸組を、厚さ4.5㎝×幅9㎝の木材の筋かいを入れた軸組とする場合、1階の張り間方向の当該軸組の長さの合計の最小限必要な数値として、建築基準法上、正しいものは、次のうちどれか。ただし、小屋裏等に物置等は設けず、区域の地盤及び風の状況に応じた「地震力」及び「風圧力」に対する軸組の割増はないものとし、国土交通大臣が定める基準に従った構造計算は行わないものとする。
必要軸組長さは、1,250㎝である。
令第46条表2より、瓦葺屋根の階数が2の建築物の1階の階の床面積に乗ずる数値は、33㎝/㎡。
床面積は7m×10m=70㎡。
地震力に対する必要壁量は33㎝/㎡×70㎡=2,310㎝
令第46条表3より、見付面積に乗ずる数値、50㎝/㎡。
見付面積は((1.0m+2.5m+2.85m)-1.35m)×10m=50㎡。
風圧力に対する必要壁量は50㎝/㎡×50㎡=2,500㎝
地震力に対する必要壁量2,310㎝<風圧力に対する必要壁量2,500㎝より、必要壁量は2,500㎝。
令第46条表1より、厚さ 4.5㎝×幅 9 ㎝の木材の筋かいを入れた軸組の倍率は、2である。
よって、必要軸組長さは、2,500㎝÷2=1,250㎝
構造耐力上有効な軸組の長さの算定から出題された過去問題
【令和4年問題】
図のような平面を有する木造平家建ての倉庫の構造耐力上必要な軸組の長さを算定するに当たって、張り間方向と桁行方向における「壁を設け又は筋かいを入れた軸組の部分の長さに所定の倍率を乗じて得た長さの合計(構造耐力上有効な軸組の長さ)」の組合せとして、建築基準法上、正しいものは、次のうちどれか。
構造耐力上必要な軸組の長さの、張り間方向は40m、桁行方向は26mである。
令第46条(構造耐力上必要な軸組等)第4項の表1より、軸組の種類ごとの倍率は、
木ずりを柱及び間柱の両面に打ち付けた壁を設けた軸組の倍率は、1
木ずりを柱及び間柱の片面に打ち付けた壁を設けた軸組の倍率は、0.5
厚さ4.5㎝で幅9.0㎝の木材の筋かいをたすき掛けに入れた軸組の倍率は、4
厚さ4.5㎝で幅9.0㎝の木材の筋かいを入れた軸組の倍率は、2
構造耐力上有効な軸組の長さは、軸組の長さに倍率を乗じて、長さの合計を算出する。
張り間方向は、2m×1×4ヶ所+2m×4×4ヶ所=40m
桁行方向は、2m×1×4ヶ所+2m×2×4ヶ所+2m×0.5×2ヶ所=26m
【平成29年問題】
図のような平面を有する木造平家建ての倉庫の構造耐力上必要な軸組の長さを算定するに当たって、張り間方向と桁行方向における「壁を設け又は筋かいを入れた軸組の部分の長さに所定の倍率を乗じて得た長さの合計(構造耐力上有効な軸組の長さ)」の組合せとして、建築基準法上、正しいものは、次のうちどれか。
構造耐力上必要な軸組の長さの、張り間方向は36m、桁行方向は26mである。
令第46条第4項の表1より、軸組の種類ごとの倍率は、
木ずりを柱及び間柱の両面に打ち付けた壁を設けた軸組の倍率は、1
木ずりを柱及び間柱の片面に打ち付けた壁を設けた軸組の倍率は、0.5
厚さ4.5㎝で幅9.0㎝の木材の筋かいをたすき掛けに入れた軸組の倍率は、4
厚さ4.5㎝で幅9.0㎝の木材の筋かいを入れた軸組の倍率は、2
構造耐力上有効な軸組の長さは、軸組の長さに倍率を乗じて、長さの合計を算出する。
張り間方向は、2m×0.5×4ヶ所+2m×4×4ヶ所=36m
桁行方向は、2m×1×4ヶ所+2m×2×4ヶ所+2m×0.5×2ヶ所=26m
問題No.6【構造強度① 図形・図面形式】のまとめ
令第46条第4項の表1~表3の数値により、必要な軸組長さや、存在する構造耐力上有効な軸組の長さを算定する問題が出題されます。
過去に出題された問題は、必要軸組長さの算定、構造耐力上有効な軸組の長さ算定の2パターンです。
他の構造強度に関する問題と一緒に学習することで、効率的に対策できます。
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