全20問の解答・解説
令和5年(2023年7月23日実施)の一級建築士試験 学科Ⅱ(環境・設備)の全20問を、選択肢ごとに正誤の理由を示して解説します。環境工学(熱・空気・光・音・色)と建築設備(空調・給排水・電気・防災)から出題されます。まず自分で解き、「解答・解説を見る」を開いて答え合わせをしてください。

令和5年 一級建築士試験(学科)の概要
問題文は、公益財団法人 建築技術教育普及センターが公表している令和5年一級建築士試験 学科Ⅱ(環境・設備)の試験問題から、解説に必要な範囲で引用しています(各問の枠の右下に出典)。正答は、同センターの合格基準点等(正答肢)と全問を照らし合わせています。
解説は、出題当時の法令・基準によります(法令がからむ問題は令和5年1月1日時点の法令)。その後の改正や基準の改定で答えが変わる問題には「🔶 現在の基準では」、言い方だけが変わった問題には「ℹ️ その後の改正」の枠を付けています。
分野ごとの問題一覧
環境・設備の20問は、毎年おおむね同じ順番で、分野ごとに出題されます。解きたい問題を押すと、その問題へ移動します。
🌡️ 環境工学・温熱・空気環境・伝熱・防火(No.1〜No.5)
No.1環境工学(夜間放射・冷房期の平均日射熱取得率・NC値・色の誘目性)
環境工学に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1夜間放射(実効放射)とは、地表における、「上向きの地表面放射」と「下向きの大気放射」との差のことである。2冷房期の平均日射熱取得率(ηAC)とは、窓から直接侵入する日射による熱と、屋根、天井、外壁などの窓以外から日射の影響で熱伝導により侵入する熱を評価した指標である。3NC値とは、室内騒音を評価する指標の一つであり、対象となる騒音のオクターブバンドごとの音圧レベルをNC曲線群上にプロットし、全ての帯域で、あるNC曲線を下回ったときのその曲線値である。4色の誘目性とは、目を引きやすいか否かに関する属性であり、一般に、色相においては緑が最も高くなる。出典:公益財団法人 建築技術教育普及センター「令和5年一級建築士試験 学科Ⅱ(環境・設備)」No.1
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夜間放射(実効放射)は、地表面から上向きに出る放射と、大気から下向きにくる放射との差で、晴れた夜ほど大きく、放射冷却の原因になる。
冷房期の平均日射熱取得率(ηAC)は、窓から直接入る日射熱と、屋根・天井・外壁など窓以外の部分から日射の影響で熱伝導により入る熱を合わせて評価する、外皮の日射の入りやすさの指標。
NC値は室内騒音の評価指標で、騒音のオクターブバンドごとの音圧レベルをNC曲線群に重ね、すべての帯域で下回るNC曲線のうち最も小さい曲線の値で表す。
色の誘目性(人の目を引きつける度合い)は、色相では赤が最も高く、黄・橙なども高い。緑や青は低い。
No.2室内の温熱環境(コールドドラフト・潜熱発熱量の比率・PMV の適用範囲・上下温度差)
室内の温熱環境に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1コールドドラフトは、暖房時の室内において、外気により冷やされた窓ガラスからの放射熱伝達により生じる現象である。2人体からの総発熱量に占める潜熱発熱量の比率は、一般に、室温が高くなるほど増加する。3予測平均温冷感申告(PMV)は、主に均一な環境に対する温熱快適指標であるので、不均一な放射環境や上下温度差が大きな環境等に対しては、適切に評価できない場合がある。4室内の上下温度分布は、椅座位の場合、くるぶしの高さ(床上0.1m)と頭の高さ(床上1.1m)の温度差が3℃以内とすることが望ましい。出典:公益財団法人 建築技術教育普及センター「令和5年一級建築士試験 学科Ⅱ(環境・設備)」No.2
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コールドドラフトは、冬の暖房時に、外気で冷やされた窓ガラスの近くで室内の空気が冷やされて重くなり、床に向かって下降する冷たい気流のこと。窓ガラスからの放射熱伝達で生じるのではない(冷たい窓面による冷放射とは別の現象)。
室温が高くなると、体からの熱は放射・対流(顕熱)では逃げにくくなり、汗の蒸発(潜熱)で逃がす割合が増える。
PMV は均一な環境を前提にした指標なので、冷たい窓のそばのような不均一な放射環境や、上下の温度差が大きい環境では、正しく評価できないことがある。
椅子に座った人では、くるぶし(床上0.1m)と頭(床上1.1m)の温度差を3℃以内にするのが望ましい。
No.3建築物衛生法の空気環境の基準(一酸化炭素・温度・浮遊粉じん・ホルムアルデヒド)
空気調和設備を設けた延べ面積5,000㎡の事務所ビルの居室における空気環境に関する次の測定結果のうち、「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」に照らして、最も不適当なものはどれか。
1一酸化炭素の含有率 ――0.001%(10ppm)2温度 ――18.0℃3浮遊粉じんの量 ―― 空気1㎥につき0.10mg4ホルムアルデヒドの量 ―― 空気1㎥につき0.10mg出典:公益財団法人 建築技術教育普及センター「令和5年一級建築士試験 学科Ⅱ(環境・設備)」No.3
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一酸化炭素の含有率の基準は、100万分の6以下(6ppm以下)(建築物衛生法施行令 第2条。2022年4月1日に10ppmから改められた)。0.001%(10ppm)は基準を超えている。
温度の基準は18℃以上28℃以下(2022年4月1日に17℃以上から改められた)。18.0℃は基準を満たしている。
浮遊粉じんの量の基準は、空気1㎥につき0.15mg以下。0.10mgは基準を満たしている。
ホルムアルデヒドの量の基準は、空気1㎥につき0.1mg以下。0.10mgは基準を満たしている。
建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行令 第2条第一号イ(一酸化炭素の含有率は100万分の6以下・温度は18℃以上28℃以下・浮遊粉じんの量は空気1㎥につき0.15mg以下・ホルムアルデヒドの量は空気1㎥につき0.1mg以下。2022年4月1日の改正後)
No.4外壁の内部の温度分布(熱伝導率の大小・熱伝導率を変えたときの温度・材料の入れ替えと表面結露)
図は、冬期において、定常状態にある外壁の内部及び周囲の温度分布を示したものである。次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。ただし、図中の屋外温度to、室内温度ti及び材料の厚さdの条件は変わらないものとする。
図を押すと大きく表示します 1材料(ア)は、材料(イ)より熱伝導率が小さい。2材料(ア)の熱伝導率を大きくすると、材料(イ)の各部分の温度が下がる。3材料(イ)の熱伝導率を小さくすると、材料(ア)の各部分の温度が上がる。4材料(ア)と材料(イ)を入れ替えたとしても、室内表面結露の防止には効果がない。出典:公益財団法人 建築技術教育普及センター「令和5年一級建築士試験 学科Ⅱ(環境・設備)」No.4
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定常状態では、どの層にも同じ量の熱が流れるので、厚さが同じなら、温度の勾配が急な層ほど熱伝導率が小さい。図では材料(ア)の勾配のほうが急なので、(ア)は(イ)より熱伝導率が小さい。
(ア)の熱伝導率を大きくすると、壁全体の熱抵抗が小さくなって流れる熱が増える。室内側から見ると、室内表面と(イ)の中の温度降下が大きくなるので、(イ)の各部分の温度は下がる。
(イ)の熱伝導率を小さくすると、壁全体の熱抵抗が大きくなって流れる熱が減る。屋外側から見ると、屋外表面と(ア)の中の温度上昇が小さくなるので、(ア)の各部分の温度は下がる。上がるのではない。
材料を入れ替えても、熱抵抗の合計(熱貫流率)は変わらないので、流れる熱も室内側の表面温度も変わらない。室内表面結露の防止には効果がない(内部結露のしやすさは変わる)。
No.5建築物の防火・防災(開口面積と火災継続時間・層間区画・煙突効果・異種用途区画)
建築物における防火・防災に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1室内の可燃物量が同じ場合、一般に、外気が流入する開口面積が大きいほど火盛り期の火災継続時間が長くなる。2建築物の上階への延焼防止のためには、層間区画を十分に確保する必要があり、ファサードデザインに応じてバルコニーや庇等により対応する方法がある。3竪穴区画内の温度が屋外より高くなる冬期において、地下階がない建築物では、火災階が下階であるほど、竪穴区画への煙の侵入量が増える傾向にある。4建築物の用途が異なる部分に設けられる異種用途区画については、原則として、異なる用途部分への延焼を防止するために防火区画とする。出典:公益財団法人 建築技術教育普及センター「令和5年一級建築士試験 学科Ⅱ(環境・設備)」No.5
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室内の火災の火盛り期は、開口から入る空気の量で燃え方が決まる(換気支配)。可燃物の量が同じなら、開口面積が大きいほど空気がよく入って速く燃えるので、火災の継続時間は短くなる(温度は高くなる)。
上の階への延焼を防ぐには、外壁の開口部の間の層間区画(スパンドレル)を確保し、ファサードに応じてバルコニーや庇で炎を外へ逃がす方法もある。
冬期に竪穴区画の中が屋外より暖かいと煙突効果が働き、中性帯より下の階では竪穴区画の中が負圧になる。火災階が下の階であるほど、竪穴区画に煙が多く入りやすい。
建築物の用途の違う部分の間には、管理の形態や使う時間が違い、火災の影響が広がりやすいので、原則として防火区画(異種用途区画)を設ける。
💡 日照・照明・色彩・音(No.6〜No.10)
No.6北緯35度の太陽位置図(春分の15時の高度・夏至に真東にくる時刻・秋分の高度45°・冬至の日没の方位角)
図は、北緯35度の地点における太陽位置図である。この地点における太陽の位置に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
(注)図については、著作権法上の関係から、その出所等を明示しています。「建築設計資料集成1環境」(社団法人日本建築学会 編者、昭和53年6月10日発行)56頁年間の太陽位置図(北緯35°・極射影)1春分の日において、時刻(真太陽時)15時における太陽高度は、約35°である。2夏至の日において、太陽が真東にくる時刻(真太陽時)は、7時頃である。3秋分の日において、太陽高度が約45°となるのは、太陽が概ね南東又は南西にくるときである。4冬至の日において、日没時の太陽方位角は、約60°である。出典:公益財団法人 建築技術教育普及センター「令和5年一級建築士試験 学科Ⅱ(環境・設備)」No.6
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春分の日(赤緯0°)の15時(時角45°)の太陽高度は、sin h=cos35°×cos45°≒0.58 より約35°。※この問題の図(太陽位置図)は日本建築学会「建築設計資料集成」の図(センター以外の著作物)のため、この記事には載せていない。
夏至の日に太陽が真東にくるのは、真太陽時で8時半頃(北緯35度では、日の出は真東より北寄りで、太陽はしばらくしてから真東にくる)。7時頃ではない。
秋分の日に太陽高度が約45°になるのは10時頃と14時頃で、そのときの太陽方位角は約45°(南東・南西)になる。
冬至の日の日没の太陽方位角は、南から西へ約60°(真西より南寄り)。日の出も南から東へ約60°の方位になる。
No.7点光源による鉛直面照度の大小(逆二乗の法則・入射角の余弦の法則)
図のような点光源に照らされた受照面上の点A、B、Cの鉛直面照度の大小関係として、最も適当なものは、次のうちどれか。ただし、点光源の配光特性は一様なものとし、反射は考慮しないものとする。
図を押すと大きく表示します 1A > B = C2A > C > B3B = C > A4C > B > A出典:公益財団法人 建築技術教育普及センター「令和5年一級建築士試験 学科Ⅱ(環境・設備)」No.7
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B(50lx)と C(100lx)は等しくない。B は光が斜め60°から当たるので、照度が半分になる。
点光源による照度=光度÷距離²×cos(入射角)。
・A:200÷1²=200lx(垂直に入射)
・B:距離は 2÷cos60°=4m、入射角60°なので 1,600÷4²×cos60°=50lx
・C:1,600÷4²=100lx(垂直に入射)
大きい順に A > C > B。
A(200lx)が最も大きい。光度が小さくても距離が1mと近いので、照度は大きくなる。
順番が逆。A=200lx、B=50lx、C=100lx。
No.8色彩(xy色度図のx・y・スペクトル軌跡・マンセル表色系の適用・JISの安全色)
色彩に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1XYZ表色系において、xy色度図上のxの値が増大するほど赤みが強くなり、yの値が増大するほど緑みが強くなる傾向がある。2XYZ表色系において、xy色度図上の外周の釣鐘形の曲線部分は、単一の波長によって表される単色光の色度座標を示す。3マンセル表色系は、光源から出る光の色に適用することはできない。4JISの安全色の規定において、「赤」の表示は、「注意警告」を意味する。出典:公益財団法人 建築技術教育普及センター「令和5年一級建築士試験 学科Ⅱ(環境・設備)」No.8
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xy色度図では、xが大きいほど赤み、yが大きいほど緑みが強くなる傾向がある。
xy色度図の外周の釣鐘形の曲線(スペクトル軌跡)は、単一の波長の光(単色光)の色度座標を示す。
マンセル表色系は、物の表面の色(物体色)を表す体系で、光源の光の色には使えない。
JIS の安全色で、赤は「防火」「禁止」「停止」「高度の危険」を表す。「注意警告」を表すのは黄。
No.9吸音・遮音(透過損失と透過率・公共施設の吸音・植栽による騒音の減衰・多孔質材料の厚さ)
吸音・遮音に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1壁の音響透過損失を10dB増加させるためには、壁の音響透過率を現状の1/10にする必要がある。2空港等の公共施設においては、吸音処理を行うことで、放送音声の聞こえやすさを確保することができる。3学校等の施設においては、周囲に生垣や並木等の植栽を設けることで、騒音を減衰させる大きな物理的効果が得られる。4剛壁に密着させて設置する多孔質吸音材料を厚くすると、一般に、低周波数域における吸音率が上昇する。出典:公益財団法人 建築技術教育普及センター「令和5年一級建築士試験 学科Ⅱ(環境・設備)」No.9
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透過損失=10log(1/音響透過率)なので、透過損失を10dB増やすには、音響透過率を1/10にする。
空港などの大空間では、吸音処理で残響を抑えると、放送の音声が聞き取りやすくなる。
生垣や並木などの植栽は、見た目で騒音を和らげる心理的な効果はあるが、騒音を減らす物理的な効果は小さい。大きな減衰を得るには、塀などの遮音壁や距離の確保が必要。
剛壁に密着させた多孔質吸音材料を厚くすると、低い周波数の吸音率が上がる(吸音できる範囲が低音側に広がる)。
No.10室A・B・Cの残響時間の大小(室容積・室内表面積・平均吸音率)
表に示す条件をもつ室A、B、Cにおける残響時間の大小関係として、最も適当なものは、次のうちどれか。
室名 室容積(㎥) 室内表面積(㎡) 平均吸音率 A 1,000 750 0.2 B 1,500 1,000 0.3 C 3,000 1,500 0.2 1A > B > C2A > C > B3C > A > B4C > B > A出典:公益財団法人 建築技術教育普及センター「令和5年一級建築士試験 学科Ⅱ(環境・設備)」No.10
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A(6.7)が最も長いとするのは誤り。室容積の大きい C の残響時間が最も長い。
A が最も長いとするのは誤り。残響時間は室容積÷吸音力に比例する。
セイビンの式より、残響時間は 0.161×室容積÷吸音力(室内表面積×平均吸音率)に比例する。
・A:1,000÷(750×0.2=150)≒6.7
・B:1,500÷(1,000×0.3=300)=5.0
・C:3,000÷(1,500×0.2=300)=10
長い順に C > A > B。
C が最も長いのは合っているが、A(6.7)のほうが B(5.0)より長い。
🌀 空気調和・換気設備(No.11〜No.13)
No.11空気調和設備(冷暖同時型マルチ・開放式と密閉式の冷却塔・水蓄熱槽・モジュール型チリングユニット)
空気調和設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1冷暖同時型のマルチパッケージ型空調機は、同一冷媒系統内で冷房と暖房の混在運転をする場合には、熱回収により省エネルギー効果が期待できる。2開放式冷却塔は、同じ冷却能力の密閉式冷却塔に比べて、送風機動力が大きくなる。3水蓄熱槽を用いた熱源システムは、熱源機が空調負荷の変動に直接追従しなくてよいので、熱源機の容量を低減できる。4空気熱源ヒートポンプチリングユニットを複数台連結するモジュール型は、負荷変動に対応して運転台数が変わるので、効率的な運転が可能である。出典:公益財団法人 建築技術教育普及センター「令和5年一級建築士試験 学科Ⅱ(環境・設備)」No.11
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冷暖同時型のマルチパッケージ型空調機は、同じ冷媒の系統で冷房と暖房を同時に行うとき、冷房側の排熱を暖房側に使う熱回収ができるので、省エネルギーになる。
開放式冷却塔は、冷却水に直接空気を当てて冷やすので熱交換の効率がよい。密閉式冷却塔は、コイルの中の冷却水を散布水と空気で間接的に冷やすので、同じ冷却能力では大きくなり、送風機の動力は密閉式のほうが大きい。
水蓄熱槽があると、熱源機は負荷の変動に直接合わせて運転しなくてよく、夜間などに蓄えた熱を使えるので、熱源機の容量を小さくできる。
空気熱源ヒートポンプチリングユニットを何台もつないだモジュール型は、負荷に合わせて運転台数を変えられるので、効率のよい運転ができる。
No.12空気調和設備(冷水パネルの放射空調・床吹出し空調・リバースリターン方式・デシカント空調とコージェネ)
空気調和設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1冷水パネルを用いた放射空調方式は、気流や温度むらによる不快感が少ない方式であるが、パネル表面の結露を防止するため、パネル表面温度を室内空気の露点温度以上に保つ必要がある。2床吹出し空調方式は、冷房運転時であっても、空調域の高さに応じた気流特性を有する床吹出し口を用いることにより、天井高にかかわらず効率的な居住域空調が可能である。3リバースリターン方式は、ダイレクトリターン方式に比べて、冷温水配管のスペースを縮小することができる。4デシカント空調方式は、コージェネレーションシステムと組み合わせることによって、排熱の利用が可能となるので、コージェネレーションシステムの総合効率の向上に寄与することができる。出典:公益財団法人 建築技術教育普及センター「令和5年一級建築士試験 学科Ⅱ(環境・設備)」No.12
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冷水パネルの放射空調は、気流や温度のむらによる不快感が少ないが、パネルの表面で結露しないよう、表面温度を室内空気の露点温度以上に保つ必要がある。
床吹出し空調は、空調する高さに合った気流の特性をもつ吹出し口を使えば、冷房でも天井高によらず効率よく居住域を空調できる。
リバースリターン方式は、各機器までの往き管と還り管の長さの合計をそろえるため、還り管をいったん遠回りさせる。ダイレクトリターン方式より配管が長くなり、配管スペースは大きくなる。
デシカント空調は、除湿剤の再生に熱を使うので、コージェネレーションの排熱を使えば排熱の利用先が増え、システムの総合効率が上がる。
No.13換気設備の計画(喫煙室の気流・ソーラーチムニー・排気フードⅠ型の有効換気量・ボイラー室の換気方式)
換気設備の計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1喫煙室において、非喫煙場所との境界の開口部における気流の風速は、喫煙室に向かって0.2m/s以上とした。2事務所ビルにおいて、執務室の中央南面に縦シャフトを通し、その頂部を延長したソーラーチムニー方式を採用することで温度差換気を積極的に活用した。3火気使用室において、排気フードⅠ型を設けた換気扇の有効換気量Ⅴは、V=30KQ(K:燃料の単位燃焼量当たりの理論廃ガス量、Q:火を使用する設備又は器具の実状に応じた燃料消費量)により算出した。4ボイラー室において、燃料の燃焼に伴う発熱を制御するため、第3種換気方式とした。出典:公益財団法人 建築技術教育普及センター「令和5年一級建築士試験 学科Ⅱ(環境・設備)」No.13
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喫煙室では、たばこの煙が外に漏れないよう、非喫煙場所との境界の開口部で、喫煙室に向かう気流を0.2m/s以上にする(受動喫煙防止の技術的基準)。
ソーラーチムニーは、日射で温めた縦シャフトの上昇気流(煙突効果)を使って、温度差換気を積極的に行う方式。
排気フードⅠ型を設けた換気扇の有効換気量は、V=30KQ で求める(フードなしは40KQ、排気フードⅡ型は20KQ。昭和45年建設省告示第1826号)。
ボイラー室は、燃焼に多くの空気が必要で、発熱も多い。排気だけを機械で行う第3種換気では室が負圧になり、燃焼用の空気が不足するので、給気を機械で行う第1種換気(または第2種換気)とする。
🚰 給排水・電気設備(No.14〜No.17)
No.14事務所ビルの飲料用受水槽(気相部の材料・容量と塩素滅菌・水槽照度率・迂回壁)
事務所ビルの飲料用受水槽に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1塩素による腐食の発生を防ぐため、ステンレス鋼板製の受水槽は、水面上部(気相部)には水面下部(液相部)より耐食性の高いステンレス鋼材を用いた。2断水時におけるBCP対策等のため、受水槽の容量を1日予想給水量の2倍に設定したので、塩素滅菌装置を設置した。3水槽内における藻類の増殖を防ぐため、屋外に設置するFRP製の受水槽は、水槽照度率(水槽内照度[lx]/水槽外照度[lx]×100)[%]が10%以下のものを用いた。4水槽内の滞留水による死水ができないようにするため、大容量の受水槽内には迂回壁を設けた。出典:公益財団法人 建築技術教育普及センター「令和5年一級建築士試験 学科Ⅱ(環境・設備)」No.14
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ステンレス鋼板製の受水槽の水面より上(気相部)は、水から揮発した塩素で腐食しやすいので、水面下より耐食性の高いステンレス鋼材を使う。
受水槽の容量を大きくすると、水が槽に長くとどまって残留塩素が減りやすいので、塩素滅菌装置を設けて水質を保つ。
屋外の FRP 製の受水槽では、光が入ると藻類が増えるので、水槽照度率を0.1%以下にしたものを使う。10%以下では光が入りすぎる。
大容量の受水槽では、水が流れずにとどまる死水ができないよう、槽の中に迂回壁を設けて水の流れをつくる。
No.15給排水衛生設備(合流式の雨水排水・排水ますの間隔・雨水排水管径の算定・サイホン式雨水排水)
給排水衛生設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1公共下水道が合流式である地域においては、害虫や臭気等の侵入防止を目的として、雨水排水はトラップますを介して一般排水系統の敷地排水管に接続する。2管径200mmの敷地排水管の排水ますは、起点、屈曲点、合流箇所、ますの間隔が24m以内となるような位置等に設ける。3雨水排水管径の算定に用いる雨量に最大雨量の1時間値を用いることは、10分間値を用いた場合よりも排水管径は大きくなるので、局地的な集中豪雨への対策として有効である。4サイホン式雨水排水システムは、特殊な形状のルーフドレンによりサイホン現象を発生させ、多量の雨水を排水する方式で、一般に、従来方式に比較して雨水たてどいの口径を小さくすることができる。出典:公益財団法人 建築技術教育普及センター「令和5年一級建築士試験 学科Ⅱ(環境・設備)」No.15
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合流式の地域では、雨水排水を一般排水の敷地排水管につなぐとき、害虫や臭気が雨水管に入らないよう、トラップますを介して接続する。
敷地排水管の排水ますは、起点・屈曲点・合流箇所などに設け、直線部では管径の120倍以内の間隔で設ける。管径200mmなら24m以内。
雨水排水管の管径は、最大雨量を1時間当たりに換算した値で求める。10分間の最大雨量を換算した値のほうが、1時間の最大雨量より大きいので、管径も大きくなる。局地的な集中豪雨への対策には10分間値を使うほうが有効。
サイホン式雨水排水システムは、特殊なルーフドレンで管内を満水にしてサイホン現象を起こし、多量の雨水を排水する方式で、従来の方式より雨水立て管の口径を小さくできる。
No.16電気設備(力率・需要率・負荷率・不等率)
電気設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1力率は、交流回路に電力を供給する際における、「皮相電力」を「有効電力」で除したものである。2需要率は、ある電力系統における、「接続された負荷の最大需要電力」を「負荷設備容量の総和」で除したものである。3負荷率は、ある期間における、「平均需要電力」を「最大需要電力」で除したものである。4不等率は、「ある系統に接続されている個々の負荷の最大需要電力の合計」を「その系統の最大需要電力」で除したものである。出典:公益財団法人 建築技術教育普及センター「令和5年一級建築士試験 学科Ⅱ(環境・設備)」No.16
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力率は、有効電力を皮相電力で割った値(有効電力÷皮相電力)。皮相電力を有効電力で割るのではない。
需要率=最大需要電力÷負荷設備容量の合計。設備のうち、実際に同時に使われる割合を表す。
負荷率=ある期間の平均需要電力÷最大需要電力。設備がどれだけ平均して使われているかを表す。
不等率=個々の負荷の最大需要電力の合計÷系統全体の最大需要電力。最大需要が起きる時刻のずれを表し、1以上になる。
No.17電気設備(SPD・配電電圧と電線の太さ・スターデルタ始動・雷保護の引下げ導線)
電気設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1雷保護システムにおけるSPD(サージ防護デバイス)は、建築物に対する直撃雷・近傍雷による雷害から、電気・電子機器を守るために設置する装置のことである。2同一容量の負荷設備に電力を供給する場合における電線の断面積は、同じ種類の電線であれば、配電電圧が400Vよりも200Vのほうが、小さいものを使用することができる。3かご形三相誘導電動機の始動電流は、全電圧始動方式(直入れ始動)よりもスターデルタ始動方式のほうが小さくなる。4鉄骨造の建築物における雷保護システムの引き下げ導線は、地上部分の構造体の鉄骨を利用することができる。出典:公益財団法人 建築技術教育普及センター「令和5年一級建築士試験 学科Ⅱ(環境・設備)」No.17
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SPD(サージ防護デバイス)は、直撃雷や近くの落雷で電源線・通信線に入る過電圧(雷サージ)から、電気・電子機器を守る装置。
同じ容量の負荷に電力を送るとき、電圧が高いほど流れる電流は小さくなる。電線の断面積は、400Vのほうが200Vより小さくできる。
スターデルタ始動は、始動時に巻線をスター結線にして電圧を下げる方式で、始動電流を全電圧始動(直入れ始動)の約1/3にできる。
鉄骨造の建築物では、構造体の鉄骨を雷保護システムの引下げ導線として利用できる。
🔥 自動火災報知設備・建築設備・省エネルギー(No.18〜No.20)
No.18自動火災報知設備(炎感知器・P型とR型の受信機・区分鳴動・耐火配線)
自動火災報知設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1炎感知器は、天井が高い空間のように、熱や煙が天井面に到達する以前に分散し、火災検出が困難な場所において使用される。2P型受信機は、R型受信機と異なり、固有信号による伝送方式であるので信号線を少なくすることができる。3地区音響装置における区分鳴動方式とは、火災時に一斉に鳴動させることでパニックを発生させないように、階の区分ごとに限定して鳴動させる方式のことである。4予備電源が内蔵されていない受信機と非常電源間の配線には、火災時に異常なく動作させるために、耐火配線を使用する。出典:公益財団法人 建築技術教育普及センター「令和5年一級建築士試験 学科Ⅱ(環境・設備)」No.18
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炎感知器は、炎の紫外線・赤外線を検出する感知器で、天井が高く、熱や煙が天井に届く前に薄まって検出しにくい場所に使う。
固有の信号(アドレス)で伝送するので信号線を少なくできるのは、R型受信機。P型受信機は、警戒区域ごとに共通の信号線を引くので、区域が多いと信号線が多くなる。
区分鳴動は、大規模な建物で一斉に鳴らすとパニックや避難の集中が起きるおそれがあるため、出火階とその直上階など、区分した階だけを先に鳴らす方式。
予備電源を内蔵していない受信機と非常電源の間の配線は、火災のときも動くよう耐火配線とする。
No.19建築設備(設計用標準震度の適用階・免震建築物のエレベーター・非常用発電機の冷却方式・エキスパンションジョイントの配管)
建築設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1高層建築物において、1階の天井内に吊り支持された設備機器の設計用地震力を算定する場合、設計用標準震度は、適用階の区分を中間階とし、耐震クラスに応じた値を用いる。2基礎免震構造の建築物において、エレベーターの設計用水平地震力を算定する場合、設計用水平標準震度は、建築物の高さに関係なく全ての階で同じ値を用いる。3大地震後にも長時間継続して使用する非常用発電機の冷却方式は、冷却水が不要な空冷式が望ましい。4エキスパンションジョイント部分には、原則として、給水管を通過させてはならないが、やむを得ず通過させる場合は、低層部を避け、できるだけ高層部に配管する。出典:公益財団法人 建築技術教育普及センター「令和5年一級建築士試験 学科Ⅱ(環境・設備)」No.19
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高層建築物の1階の天井から吊った設備機器は、1階の床ではなく上の階の床(天井スラブ)から支持されるので、設計用標準震度の適用階の区分は中間階とし、耐震クラスに応じた値を使う。
基礎免震構造では、免震層より上の建物はほぼ一様に揺れるので、エレベーターの設計用水平標準震度は、建物の高さに関係なくすべての階で同じ値を使う。
大地震の後も長時間使う非常用発電機は、断水で冷却水が得られなくても運転できるよう、冷却水のいらない空冷式(ラジエーター式)が望ましい。
エキスパンションジョイント部は、地震のとき両側の建物が別々に揺れて変位が大きいので、原則として給水管を通さない。やむを得ず通す場合は、変位の小さい低層部で、変位を吸収できる継手を使って通す。高層部ほど変位が大きいので避ける。
No.20環境・設備(ZEB Ready・BEI・PAL*・代替フロン)
環境・設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1我が国における「ZEB Ready」は、再生可能エネルギーによる削減分を除いて、基準となる一次エネルギー消費量から50%以上の省エネルギー化を達成した建築物と定義されている。2建築物の省エネルギー基準における一次エネルギー消費性能の評価指標BEIは、「評価建築物の省エネルギー量の合計」を「評価建築物の基準となる一次エネルギー消費量」で除した値と定義されている。3建築物の省エネルギー基準における外皮性能の評価指標PAL*(パルスター)は、その値が小さいほど建築物の外皮の熱性能が高いと判断される。4冷凍機に使用されている代替フロン(HFC)は、温室効果ガスの一種であり、モントリオール議定書のキガリ改正(2016年)により生産及び消費量の段階的削減が求められている。出典:公益財団法人 建築技術教育普及センター「令和5年一級建築士試験 学科Ⅱ(環境・設備)」No.20
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「ZEB Ready」は、再生可能エネルギーを除いて(省エネだけで)、基準の一次エネルギー消費量から50%以上を削減した建築物。
BEI は、設計した建物の一次エネルギー消費量(設計一次エネルギー消費量)を、基準一次エネルギー消費量で割った値。省エネルギー量(削減量)を割るのではない。1.0以下で省エネ基準に適合し、小さいほど省エネ性能が高い。
PAL*(パルスター)は、建物のペリメーターゾーンの年間熱負荷を床面積で割った外皮性能の指標で、小さいほど外皮の熱性能が高い。
代替フロンの HFC はオゾン層は壊さないが温室効果が大きいので、モントリオール議定書のキガリ改正(2016年)で、生産と消費を段階的に削減することになった。
令和5年の合格基準点(学科の試験)
配点は各問題1点(学科Ⅰ・Ⅱは各20点、学科Ⅲ・Ⅳは各30点、学科Ⅴは25点、合計125点)で、各科目の基準点と総得点の基準点のすべてに達した人が合格です。
| 学科Ⅰ 計画 | 学科Ⅱ 環境・設備 | 学科Ⅲ 法規 | 学科Ⅳ 構造 | 学科Ⅴ 施工 | 総得点 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 合格基準点 | 11点 | 11点 | 16点 | 16点 | 13点 | 88点 |
※ 合格基準点は、各科目は過半の得点、総得点はおおむね90点程度を基本的な水準として想定し、令和5年は総じて難度が高かったことから、総得点の基準点が88点とされました。
出典:建築技術教育普及センター「令和5年一級建築士試験『学科の試験』の合格基準点等について」
令和5年の環境・設備の基準点は11点(20点中)でした。環境・設備は計算問題もある科目で、20問と問題数が少ないぶん1問の重みが大きいので、用語と式の意味を過去問で正誤の理由まで説明できるようにしておくと安心です。
ほかの年度・ほかの科目の過去問
この記事の問題文と図は、公益財団法人 建築技術教育普及センターが公表している令和5年 一級建築士試験(学科の試験)の問題から、著作権法第32条の引用として掲載しています。著作権は同センターにあります。
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