要点と過去問10年分
二級建築士試験 学科Ⅲ(建築構造)の No.1 で毎年出題される「断面の性質」について、図心と断面一次モーメント、断面二次モーメント(長方形・外形からの引き算・平行軸の定理)の求め方を要点にまとめ、令和8年〜平成29年の10年分の過去問を図つきで解説します。

断面の性質の出題の傾向(令和8年〜平成29年)
No.1 は、10年とも断面の性質の計算問題でした。図心の座標が3年、断面二次モーメント(値・比・大小)が7年です。どの年も、断面を長方形に分けて足し引きすれば解けます。
毎年 No.1 に1問(10年で10問)。この記事では、10問を問題ごとに解説しています。
過去問の問題文と選択肢は、公益財団法人 建築技術教育普及センターが公表している二級建築士試験の問題から、解説に必要な範囲で引用しています(各選択肢の枠の右下に出典)。正答は、同センターの「合格基準点等(正答肢)」と照らし合わせています。
「要点」は、今の建築基準法・告示や日本建築学会の規準などでまとめています。過去問の解説は、年度別の記事と同じく出題当時の基準によります。その後の改定で答えが変わる選択肢には「🔶 現在の基準では」の枠を付けています。
🎯 図心と断面一次モーメント
📖 図心の求め方
図心は、断面の形の中心です。断面を長方形に分けて「面積×軸からその長方形の図心までの距離」(断面一次モーメント)を足し、全断面積で割って求めます。
| 量 | 求め方 |
|---|---|
| 断面一次モーメント | Sx=Σ(A×y)、Sy=Σ(A×x)。分けた長方形ごとに、面積×その図心までの距離を足す |
| 図心の座標 | x0=Sy/A、y0=Sx/A(A=全断面積) |
✏️ 過去問:図心の座標(断面一次モーメント)(10年で3問)
断面を2つの長方形に分け、それぞれの面積と図心の座標を書き出してから「解答・解説を見る」を開いてください。
令和3年 No.1L形断面の図心の座標
図のような断面において、図心の座標(x0,y0)の値として、正しいものは、次のうちどれか。ただし、x0=Sy/A、y0=Sx/Aであり、Sx、SyはそれぞれX軸、Y軸まわりの断面一次モーメント、Aは全断面積を示すものとする。
図を押すと大きく表示します
x0(mm) y0(mm) 1. 15 35 2. 15 25 3. 25 15 4. 25 25 5. 35 15 出典:公益財団法人 建築技術教育普及センター「令和3年二級建築士試験 学科Ⅲ(建築構造)」No.1
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下の長方形(幅40・高さ20:面積800mm²、図心 x=20・y=10)と、右上の長方形(幅20・高さ40:面積800mm²、図心 x=30・y=40)に分ける。全断面積 A=1,600mm²。
・x0=Sy/A=(800×20+800×30)/1,600=25mm
・y0=Sx/A=(800×10+800×40)/1,600=25mm
令和元年 No.1L形の断面の図心の座標(断面一次モーメント)
図のような断面において、図心の座標(x0,y0)の値として、正しいものは、次のうちどれか。ただし、x0=Sy/A、y0=Sx/Aであり、Sx、SyはそれぞれX軸、Y軸まわりの断面一次モーメント、Aは全断面積を示すものとする。
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x0(mm) y0(mm) 1. 15 20 2. 15 35 3. 15 40 4. 20 35 5. 20 40 出典:公益財団法人 建築技術教育普及センター「令和元年二級建築士試験 学科Ⅲ(建築構造)」No.1
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断面を、縦の長方形①(20×60=1,200mm²・図心 x=10、y=30)と、右上の正方形②(20×20=400mm²・図心 x=30、y=50)に分ける。全断面積 A=1,600mm²
・Sy=1,200×10+400×30=24,000mm³ → x0=24,000/1,600=15mm
・Sx=1,200×30+400×50=56,000mm³ → y0=56,000/1,600=35mm
平成29年 No.1逆T形の断面の図心の座標(断面一次モーメント)
図のような断面において、図心の座標(x0,y0)の値として、正しいものは、次のうちどれか。ただし、x0=Sy/A、y0=Sx/Aであり、Sx、SyはそれぞれX軸、Y軸まわりの断面一次モーメント、Aは全断面積を示すものとする。
図を押すと大きく表示します
x0(mm) y0(mm) 1. 15 20 2. 20 20 3. 20 30 4. 25 30 5. 25 35 出典:公益財団法人 建築技術教育普及センター「平成29年二級建築士試験 学科Ⅲ(建築構造)」No.1
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断面を、下側の長方形①(60×20=1,200mm²・図心 x=30、y=10)と、縦の長方形②(20×60=1,200mm²・図心 x=10+10=20、y=20+30=50)に分ける。全断面積 A=2,400mm²
・Sy=1,200×30+1,200×20=60,000mm³ → x0=60,000/2,400=25mm
・Sx=1,200×10+1,200×50=72,000mm³ → y0=72,000/2,400=30mm
📐 断面二次モーメント
📖 断面二次モーメントの求め方
断面二次モーメントは、部材の曲げにくさを表す量です。中立軸から遠い所に材料があるほど大きくなります(距離の2乗で効く)。
| 断面・考え方 | 式・ポイント |
|---|---|
| 長方形(幅b・せいh) | I=bh³/12(せいhの3乗に比例する) |
| 中空・H形・溝形など | 図心が同じ軸の上にある長方形なら、外形の長方形から空きの長方形を引く(I=(BH³-bh³)/12) |
| 軸から離れた部分(平行軸の定理) | I=I0+A×y²(I0=その部分の図心まわりの値、A=面積、y=軸までの距離) |
| 寸法をすべてn倍にした断面 | 断面二次モーメントはn⁴倍(2倍なら16倍) |
| 断面積が同じ断面どうし | 材料を中立軸から遠いフランジに集めたH形の方が大きい(曲げに強い) |
✏️ 過去問:断面二次モーメント(10年で7問)
外形から空きを引けるか、平行軸の定理を使うかを先に決めてから計算し、「解答・解説を見る」を開いてください。
令和8年 No.1断面二次モーメントの比(長方形断面とH形断面)
図のような断面積の等しい断面A及び断面Bにおいて、強軸まわりの断面二次モーメントをそれぞれIA、IBとするとき、IB/IAの値として、最も近いものは、次のうちどれか。
図を押すと大きく表示します 10.621.431.642.053.2出典:公益財団法人 建築技術教育普及センター「令和8年二級建築士試験 学科Ⅲ(建築構造)」No.1
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長方形の断面(幅b・せいh)の強軸まわりの断面二次モーメントは、I=bh³/12。
・断面A(幅6cm・せい10cm):IA=6×10³/12=500cm⁴
・断面B(H形):外形(幅12cm・せい10cm)の長方形から、ウェブの両側の空き(幅5cm×高さ6cmが2つ=幅10cm×高さ6cm)を引く。IB=(12×10³-10×6³)/12=(12,000-2,160)/12=820cm⁴
・IB/IA=820/500=1.64 → 最も近いのは1.6
断面積はどちらも60cm²で同じ(A=6×10、B=12×2×2+2×6)。材料を中立軸から遠いフランジに集めたH形のほうが、曲げに強い(断面二次モーメントが大きい)。
令和7年 No.1断面二次モーメント(X軸から離れた2つのT形の断面)
図のような断面におけるX軸に関する断面二次モーメントの値として、正しいものは、次のうちどれか。
図を押すと大きく表示します 11,038×104 mm421,056×104 mm431,440×104 mm442,076×104 mm452,112×104 mm4出典:公益財団法人 建築技術教育普及センター「令和7年二級建築士試験 学科Ⅲ(建築構造)」No.1
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X軸を中心とする長方形(幅b・高さh)の断面二次モーメントは bh³/12。上下の部分を、X軸を中心とする長方形の引き算で求める。
・幅100mmの板(上下2枚=X軸から40〜60mm):100×(120³-80³)/12=100×(1,728,000-512,000)/12≒10,133,333mm⁴
・幅10mmの突出部(上下2つ=X軸から30〜40mm):10×(80³-60³)/12=10×(512,000-216,000)/12≒246,667mm⁴
・合計:10,380,000mm⁴=1,038×10⁴mm⁴
X軸から遠い部分ほど、断面二次モーメントへの寄与が大きい(距離の2乗に比例)。
令和6年 No.1断面二次モーメントの比較(H形・箱形・溝形・2倍の大きさのH形)
図のような形状の断面A~断面Dの断面二次モーメントに関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。ただし、X軸及びY軸まわりの断面二次モーメントをそれぞれIX、IYとする。
図を押すと大きく表示します 1断面AのIYは、断面AのIXの0.5倍よりも小さい。2断面BのIXは、断面AのIXと等しい。3断面CのIXは、断面AのIXと等しい。4断面CのIYは、断面AのIXと等しくない。5断面DのIXは、断面AのIXの8倍と等しい。出典:公益財団法人 建築技術教育普及センター「令和6年二級建築士試験 学科Ⅲ(建築構造)」No.1
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断面Aの IX=(100×100³-80×80³)/12=4,920,000mm⁴。IY=フランジ2枚 2×10×100³/12+ウェブ 80×20³/12=1,720,000mm⁴。IY/IX≒0.35 なので、0.5倍より小さい。
断面B(箱形)の IX=(100×100³-80×80³)/12=4,920,000mm⁴。外形から中の空き(80×80)を引く形は断面Aと同じなので、等しい。
断面C(溝形)の IX も、外形100×100から空き(幅80×高さ80)を引く形で、X軸からの距離の分布がAと同じ。(100×100³-80×80³)/12=4,920,000mm⁴で、等しい。
断面Cの IY=外形 100×100³/12 から、空き(幅80×高さ80・中心がY軸から10mm)の 80×80³/12+80×80×10² を引いて 4,280,000mm⁴。断面Aの IX(4,920,000mm⁴)と等しくない。
断面Dは、断面Aの寸法をすべて2倍にした形。IX=(200×200³-160×160³)/12=78,720,000mm⁴で、断面Aの16倍(2⁴倍)。8倍ではない。
令和5年 No.1L形断面の図心軸まわりの断面二次モーメント
図のような断面において、図心を通りX軸に平行な図心軸に関する断面二次モーメントの値として、正しいものは、次のうちどれか。
図を押すと大きく表示します 140 cm4264 cm4388 cm44112 cm45160 cm4出典:公益財団法人 建築技術教育普及センター「令和5年二級建築士試験 学科Ⅲ(建築構造)」No.1
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L形を、縦の長方形(幅2cm・高さ6cm)と、右の横の長方形(幅6cm・高さ2cm)に分ける。どちらも面積は12cm²。
・図心の高さ:(12×3+12×1)/24=2cm(X軸から)
・縦の長方形:2×6³/12+12×(3-2)²=36+12=48cm⁴
・横の長方形:6×2³/12+12×(1-2)²=4+12=16cm⁴
・合計:48+16=64cm⁴(平行軸の定理 I=I0+Ay²)
令和4年 No.1断面二次モーメント(中空の長方形断面)
図のような断面におけるX軸に関する断面二次モーメントの値として、正しいものは、次のうちどれか。
図を押すと大きく表示します 1499.5 cm42607.5 cm43642.0 cm44715.5 cm45750.0 cm4出典:公益財団法人 建築技術教育普及センター「令和4年二級建築士試験 学科Ⅲ(建築構造)」No.1
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外形(幅10cm・高さ9cm)の長方形から、中の空き(幅6cm・高さ6cm)を引く。どちらもX軸が図心を通る。
I=(10×9³-6×6³)/12=(7,290-1,296)/12=499.5cm⁴
令和2年 No.1形状の等しい断面の断面二次モーメント(H形を横にした断面とI形の断面)
図のような形状の等しい断面A及び断面Bにおいて、図心を通るX軸に関する断面二次モーメントの値の組合せとして、正しいものは、次のうちどれか。ただし、小数点以下は四捨五入とする。
図を押すと大きく表示します
断面A(cm4) 断面B(cm4) 1. 337 653 2. 337 689 3. 337 769 4. 577 407 5. 577 653 出典:公益財団法人 建築技術教育普及センター「令和2年二級建築士試験 学科Ⅲ(建築構造)」No.1
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・断面A:縦の板(幅2・高さ10)2枚と、中央のウェブ(長さ6・高さ2)。どれも図心が X軸上にあるので、2×(2×10³/12)+6×2³/12=333.3+4.0≒337cm⁴
・断面B:外形(幅10・高さ10)から、ウェブの両側の空き(幅4×2=8・高さ6)を引く。(10×10³-8×6³)/12=(10,000-1,728)/12≒689cm⁴
断面積は同じでも、X軸から遠い所に材料が多いBのほうが大きい。
平成30年 No.1溝形の断面2つの断面二次モーメント(X軸まわり)
図のような断面におけるX軸に関する断面二次モーメントの値として、正しいものは、次のうちどれか。
図を押すと大きく表示します 1251.5 cm42433.0 cm43540.0 cm44796.0 cm45978.0 cm4出典:公益財団法人 建築技術教育普及センター「平成30年二級建築士試験 学科Ⅲ(建築構造)」No.1
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溝形1つ分=外形(幅4.5cm・高さ12cm)-内側の空き(幅3cm・高さ10cm)。どれも図心が X軸上にある。
・溝形1つ:(4.5×12³-3×10³)/12=(7,776-3,000)/12=398.0cm⁴
・2つ分:2×398.0=796.0cm⁴
まとめ:断面の性質で覚えておくこと
試験の前に見直すことを、章ごとにまとめました。左が覚える数字や言葉、右がその説明です。「要点 ›」を押すと、くわしい説明に戻ります。
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